墨成

編集後記(2024年1月)

▼明けましておめでとうございます。今年は木簡を学びます。長い間、私達は中国の晋唐時代の書や日本の三筆・三蹟を中心に学んできました。木簡を臨書として学ぶことよりも鑑賞の対象としてきたのは、木簡の存在があまりにも遠く、閉じ込められていたからでしょうか。

▼世界の四大文明(メソポタミア文明・エジプト文明・インダス文明・黄河文明)には文字の発明という共通した特徴があり、その後の発展に大きく関わってきます。古代人は狩猟から定住して農業を営むようになり、農作物の管理するために文字が生まれたとも言われています。

▼木簡や竹簡が書かれた年代は黄河文明が起こった紀元前、戦国時代から殷王朝の古い時代です。しかしながら木簡や竹簡、絹布に書かれた帛(はく)の存在が知られるようになったのは、一九〇一年イギリスの探検家オーレル・スタインによって発掘されてからのことでした。木簡は石や獣の骨に刻んだ文字ではなく肉筆の文字、古代人の息吹がそのまま伝わってきます。人は自分の生きた証を後世に伝えるべく、木や竹に書いて思いを託しました。

▼現代は筆も紙も要らないメールで簡便に思いを伝えられるようになりました。しかし簡便であるがゆえに消去することも簡単にできるようになり、ぬくもりのある書が再び見直されるのではと思います。(神原藍)