墨成

編集後記(2022年11月)

▼筋肉は何歳からでも鍛えられるそうです。書の創作も筋トレに似ていて、何歳からでも鍛え上げられると信じています。鍛えれば鍛える程効果が表れるのも似ています。高校生の武田翔さんは「自琢」という字句を選んで書きました。某作家の造語という説もありますが、「切磋琢磨」という言葉から派生した言葉でしょうか。仲間と励まし合って鍛えることが切磋琢磨であるのに対し、自琢は自分自身で自分を鍛えることです。

▼教育部有段の方は自分が書きたい漢字も課題で、今回の昇段級試験では中高校生の方々が自分の心を見つめて字句を選び、苦しみながらも楽しんで筆を持つ姿が作品に表われていました。習字と言えば、手本があってそれと同じように書くものだという考えは、ある程度間違ってはいませんが、未知の言葉を探求している同志を知って嬉しく思います。

▼自分自身を生きることは、自分の考えを持つこと、自分の信じる道を歩いてゆくことでしょうか。それを学んでいければ人生に対して臆病にならず、未知の世界を探検できるように思います。

▼「もっとも美しい経験は神秘的な体験である。それこそがあらゆる芸術と科学の源なのだ」(アインシュタイン)。言葉の世界を広げることは、美しい経験を積み重ね、自分を創造し、自分の為の人生を生きること、と考えます。(神原藍)