墨成

編集後記(2021年12月)

▼天才とは大谷翔平選手のような人だろうか。大谷選手の活躍はコロナで沈む私達の心に光を灯し続けた。彼の一挙手一投足に興奮し、監督も対峙する選手さえも、限界を超えて高みを目指す彼に目を奪われた。野球の技術ばかりではなく人間性にも惚れこみ、天才という言葉の意味を噛みしめた。

▼小学生の時のお父さんとの交換日記が紹介された。1.「大きな声を出して、元気よくプレーする」2.「キャッチボールを一所懸命に練習する」3.「一生懸命に走る」。彼の少年時代を彷彿とさせるが、優しい言葉でありながらも簡潔で、父と息子の交流によって信頼関係も育んでいる。どこでも誰からも愛され期待される彼の人間性は、周りの大人の慈愛によるものなのだろうか。

▼大谷選手が投げたボールは野球界ばかりではなく、硬直的な日本の教育界にも波紋を広げればと期待している。“「とめ・はね・はらいが手本通りではない」とやり直しを命じられた公立小学校に通う生徒が学校に行きたがらなくなった。文部科学省は漢字の書き方を柔軟に評価する方針も示しているが、現場では硬直的な指導が残る”と某新聞で報じていた。

▼墨成の教育部手本は筆の運びや勢いを重視している。形ばかりや子供を枠にはめて疑問を抑え込むのではなく、世界に羽搏こうとする子を育む教本でありたい。(神原藍)