墨成

編集後記(2021年9月)

▼今の日本のコロナ対策は一体何なのだろう。コロナウイルスに感染した妊娠八ヶ月の女性が受け入れを拒否され、入院できずに赤ちゃんは死亡したという。八箇所の病院に断られた末に。守るべき命、かけがえのない命である。

▼無性に悲しく、腹立たしい思いが込み上げてきた。コロナに直面してから二年近くになろうとしている。その間、政治家、製薬会社、医療関係者、マスコミ、そして私達一般市民は真実を見ようとしてこなかったのではないだろうか。あらゆる仮定を想定し、それに立ち向かう可能性や方策を立ててコロナと闘うべきではなかったかと忸怩たる思いになる。

▼今月の創作課題「是」は、「日」と「正」からなり、日はしゃもじの先の部分、正はしゃもじの柄の部分であるという(『字通』)。「是」は心の中のシャモジ。是か非かと私達はつねに選択を迫られている。自分の考えや哲学を持った上で、果たすべき責任を背負わなければ、人としての尊厳も見失ってしまう。

▼出来ない理由を先に考えて保身のための「ノウ」では命は救えないし、人としての品性も保てない。コロナ後も人生は続いてゆく。責任を負いたくないばかりにノウと逃れていては、人として優しさに欠ける。

▼作品を創る事は我が身を客観視すること、品を作ること。すべてが繋がっている。(神原藍)