墨成

編集後記(2021年4月)

▼漸く春がやって来ました。しかし目に見えないウイルスや病原菌に常におびやかされているという恐怖がちらつきます。一方、不安に負けて縮こまってしまっているのはどうなのか、過去にも人間は伝染病と闘ってきたではないか、と強気になったりもします。

▼こんな時、空海はこう導くでしょう。「宇宙は、人間や万物に飢餓や老病苦死のみをあたえるのではなく、むしろかぎりなく聡明でかぎりなくいたわりぶかいものである。宇宙―大日如来は、たえまなく万物を育成し、万物の上にその無限にひろい慈悲心を光被してやまないのだ」と。「人にふりかかるあらゆる現象は、人を成長させるために与えられたものなのだ」と。

▼また、現象を自分に引き寄せ、真実を見つめ、自分の判断で解決してゆこうと覚悟を決めた時、一条の光が射してくるようにも思います。逆境と思える現象をどう捉えるか。今の困難を直視して、その中から真理を探し出せるか、大切なものは何か、使命は何か、何に命を使うか、と。

▼思う儘にならない現状を、自分を育てる糧にしようと決めた瞬間、何故か直観が閃いてきます。得意平然、失意泰然と穏やかな日々を過ごしながら、今日を生き切る不思議な力が湧いてくるのです。

▼春になって桜の花はいっせいに咲き始めました。※作品集は今月発行です。(神原藍)