墨成

編集後記(2020年2月)

▼“あらゆる関係が相聞歌とならなければ何も成就出来ない”と今回ほど実感したことはありません。三十周年記念誌は発行出来るか不安が過りましたが、締切には続々と力作が寄せられ、心配も杞憂に終わりました。知られるように本を出すことは、時間的も経済的にもエネルギーが要ります。ご理解を頂いた会員の方々に心より感謝申し上げます。

▼小誌は単なる競書誌ではなく、人間本来の気高さやヒューマニズム、 生命力の顕れとする書芸術を究めていく活動の場となることを目指しています。書による自己啓発や社会参加と言えば大袈裟に聞こえますが、書にはその力があると信じます。

▼教育部の書初め作品は年々素晴らしくなり、力強さが感じられました。将来を担う子供たちの可能性を伸ばしてゆく為に、真っ当な大人としての責任を果たしてゆきたい。知恵と包容力で先を生きる大人は一端を担う責務があります。

▼書を創る喜びは出品された方々の文章からも聞こえてきました。米書研会長で卒寿を超えられた生田博子先生は、選りすぐりの料紙に御身を削るような渾身作をご出品され、設立前からの変わらないご支援と先生の情熱に、新たに三十周年記念賞を設けました。

▼審査会はささやか乍ら清新な空気に包まれ、燃える相聞歌に耳を傾けました。記念誌は四月発行です。

(神原藍)