編集後記(2022年4月)
▼芸術性の高いものには、高い技術が伴っています。何を、どんなものを美しいと感じるかは個人的に差がありますし、好き嫌いもあります。しかし観る者、聞く者に訴える力のある作品には、テクニックの裏づけがあって、多彩な表現が出来ています。逆にテクニックだけで、何も感動できないようなものもありますが、その違いは何なのでしょう。
▼書で言えば臨書と創作の違いでしょうか。もっとも、臨書方法も左に置いた古典の法帖を、右にただ写すだけなら何の意味もないかもしれません。何が、どういったところが、どのように感じるかを自分の目で観察して技術を腕に叩き込み、自分の感性を育てるように学んで行くことが大切なことと思われます。科学的な目が必要なのでしょうか。
▼画家、彫刻家、版画家、舞台装飾家、詩人、劇作家として活躍したピカソは、ゲルニカなどの抽象画が有名ですが、若い頃のデッサンを見ると、確かな描写力で技術を身につけていることが解ります。高村光太郎は彫刻家、詩人として近代の芸術を牽引しましたが、彫刻家の父親、高村光雲との葛藤があったようです。共通点は何なのでしょう。
▼自分を信じ感性を見つめて、臆することなく表現していることにあると考えます。「新しくても安物はつくるな!」と言った上田桑鳩の言葉が蘇ってきます。(神原藍)