墨成

編集後記(2020年5月)

▼誰が予想したことでしょう。平和の祭典の年、二〇二〇年がこのような惨禍に襲われるとは。地球上のほとんどの人たちが家に閉じこもり、見えないウイルスに戦々恐々とする日々。送られるはずの物資も倉庫に眠ったままの状態。五月号の校正に入った段階で尚、シアトル在住の会員の方々に四月号と作品集が届いていない現状。今更、世界中のどの国も鎖国体制には戻れません。心の片隅で他人事にように捉えていたことが、日々恐ろしい現実味を帯びてきました。

▼十四・五世紀、欧州に蔓延したペストは、3000万人もの人が死亡しましたが、都市封鎖をして治めたのは警察や軍隊の出動だったそうです。現代では、ワクチンや治療薬があれば三ヶ月で解決する問題であり、なければ三年続くかもしれないと専門家は説いています。現代でも、究極の解決方法は市民の良識に頼る都市封鎖なのです。ここにきて各国の現状と対策に格差があることも鮮明になってきました。

▼休校になって一週間も経たないうちにオンラインの授業が始まった国がある一方、物資が無くなる不安から略奪が始まり、暴動が起こる国もあります。沈静した後、世界は、人間は、どう変われるのでしょう。

(神原藍)