墨成

編集後記(2026年1月)

▼二〇二六年の表紙である光明皇后の『楽毅論』は、単なる書の技ではなく、「忠誠」「誠実」「節義」といった価値観を静かに社会に示すものでした。強烈な筆力・筆跡に込められた強い意志は、時代を超えて人々の心に語りかける力を持ちます。言葉を「書」として残すことで、時代を超えて信念を伝える力を持っていたのです。

▼折しも昨年、現代日本では初の女性首相・高市首相が誕生しました。彼女はSNSや記者会見、国会答弁などを通じて理念を発信しています。光明皇后の静的で永続的な「書」と、高市首相の動的で即時的な「声」は、時代も媒体も異なりますが、いずれも「言葉によって信念を伝える」点で共通しています。

▼さらに注目すべきは、両者が女性であり、各々の時代において異なるかたちで「公」と関わっていることです。光明皇后は政治の表舞台ではなく、慈善と文化を通じて人々の心を導き、高市首相は政治の表舞台から政策と言葉で国の方向性を示します。

▼こうして見ると、『楽毅論』を通じて信念を伝えた光明皇后と、現代の政治空間で理念を語る高市首相は、異なる時代の「言葉の使い手」として、対話を交わしているようにも思えてきます。どちらの言葉も、時代の空気を映し出しながら、人々の心に何かを残そうとしているのかもしれません。

(神原藍)